2020年の振り返り-HRの真価がますます問われた一年であった ~Voice!for HRM Vol.28 ~

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英国でもっとも有名な HRM サイトから興味深い記事をご紹介します。

https://www.peoplemanagement.co.uk/voices/comment/looking-back-at-2020-the-year-hr-stepped-up

15 Dec 2020 By Katie Jacobs

Katie Jacobs氏はこの12か月間がHRプロフェッショナルにとって困難でありながらも非常に重要であったことを振り返り、2021年の優先事項について語る。

パンデミックが勃発したばかりの3月、1年後も我々がコロナウィルスの陰で生活しているとは誰もが予測していなかったがThe Economistは 「コロナウィルス危機によってHR・人事部が脚光を浴びる」と銘打ったヘッドラインの記事を出版した。その中では、金融危機の際には役員室は企業財務責任者と化し、パンデミック渦ではCHROの役割が度々不当に退けられてきたと強調されている。

それから数か月が過ぎ、人間的な危機つまりそれは健康そして職に関する危機の中でのHRの役割についての前向きな風潮が高まったようである。CIPDとVeronica Hope Hailey教授によるコロナ危機の中での責任あるビジネスに関する近年のレポートでは、パンデミック渦中の人事の役割について、CEOや他のビジネスリーダーに意見を求めた。あるCEOは「HRチームの時が来る」と論じた。

2020年を通して、多くのHRリーダーと会話を重ねてきた。HRリーダーたちの洞察や振り返りそして課題に耳を傾ける機会を得、この危機を通じてHRがどのような役割を担ってきたかをじっくり観察することができた。HRプロフェッショナルの地位は向上し、その組織的価値を証明する証拠は沢山ある。「今年以降、我々を浅はかだといわない方が良いだろう」とあるCPOは語る。HRという領域がそのアイデンティティを確立したと感じる者もいる。また、管理職や役員メンバーに昇格した者もいる。これまでWellbeingや評価といったソフトなものと退けてきた問題に他の商業的問題と同様に着手する他のリーダーも多く散見される。

これは今年が本当にひどい年であったかを否定しているわけではない。実際に多くの命が失われ、生計が崩壊し、人々は孤立、孤独さそして悲しみと向き合わければならない。しかし、あえて2020年の中で良いことを挙げるのであれば、「人」そして仕事がどのように行われるかについての組織の考えが一新されたことであろう。またマルチステークホルダーアプローチを行う価値とビジネスの中心に「人」を据えることそして究極のフレキシブルワークといった人中心の施策を導入することの重要性を認識するリーダーが増えたことでもある。またそれと同時に責任あるアプローチを最前線そして中心に置くビジネスが増えたことでもある。これを我々はレポートの中で意思決定のための「北極星」と呼んでいる。

業務処理的(賃金補助政策導入や労務的なもの)機能から戦略的 (新しい働き方の模索)機能へとHRリーダー達の役割は変化し、この1年は激動なものとなった。彼らの職業人生の中で最も厳しい経験であったと語る者も多くいた。しかし、彼らにとってやりがいでもある。「深い苦痛感は有意義な仕事から生まれた疲労感であり、自分達の労働力に前向きな変化をもたらしたと確信している」とあるHRDは述べる。

しかし2021年の優先事項はHRが自身のWellbeingについて考える時間とスペースを確保することである。これはいわゆる「酸素マスク」類推である。自分たち自身のケアができていなければHRチームとリーダーは他のメンバーの重要なサポートを行うことはできないだろう。HRプロフェッショナルの多くは燃え尽き、他部署からの期待が重みとなってのしかかることになる。2021年、HRリーダーはかつて経験したことがないほど深刻な不況の中でリソースを求め戦うこととなる。機能的にHRはしばしばリソース不足であるといわれてきたが、経営者が真剣に「ヒト」を重要な資産として考えるのであればHRに投資をするべきである。

悲しい事実として、パンデミックに関連した景気後退が始まり、政府の支援が完全に失われ、避けようのないリバランスが訪れたばかりで最悪の事態はまだ来ていないということである。HRリーダーは厳しい決断を避けることなく、人的アプローチを取ることを優先するのであれば余力を使い、影響力そして信用力増加に努める必要がある。

しかし、私が携わってきた多くのリーダーが語る通り、一連のコロナ危機そして統一化されたリモートワークから人道的・慈悲深いリーダーシップ (例えば会議に入り込む子供にも平然としているような)更には双方向コミュニケーションが可能となるリモートワークなど様々な働き方が誕生し、より良い2021年を築くための土台となった。 「未来絵図を描き始めるかどうかは我々次第である」とあるCPOは語る。

2020年の中で何か収穫があるとすれば、次の年に何が起こるかを予測しようとすることは無意味だということであろう。しかし、HRにとって2020年は時代の流れを変えるような年であったことは自信をもって言えるだろう。

「HRは組織の思考の最前線そして中心に自らを置くべきである。我々の原則に忠実であり続けるならば、ビジネスそしてビジネス思考において正しい位置を占めるであろう職業を我々は有している。今年は厳しい一年であったが我々のprofession (専門性)は2021年に突入し、サステイナブルかつ前向きな変化をもたらすものとなるだろう」とCIPD CEO Peter Cheese氏はCIPD Leader eventで述べた。

(D.S)