Voice!for HRM Vol.29 ~中間管理職から見た、金融業界のHR課題と解決策】~

今回は、前職が某メガバンクの保険マネージャーでありました中村より。

【中間管理職から見た、金融業界のH R課題と解決策】についてコラムを書かせていただきます。

はじめに

【金融業界のHR課題と解決策】

金融業界をHRの観点で分析した場合にいくつか課題が見えてくる。
今回はその中で、3つの点に着目したい。

目次

  1. 採用
  2. 評価制度
  3. 人材育成
  4. まとめ

1.採用

金融業界の採用といえば【大量採用】が一番初めに頭に浮かぶが、昨今の金融パーソンの離職率と【大量採用】の関連性は高い。マネージメントをしている中でもよく相談を受けたが、「今後のキャリアステップが見えない。」「自分のスキルセットが分からない。」「将来が不安。」という人が’多いことが、離職率の高さの要因の一つである。ひと昔前では銀行に入社すれば、「勝ち組」「将来安泰」と言われており、社員自身も今後のキャリアについて自信を持っていたことを踏まえると、やはり社員の考え方は大きく変わっている。

原因の一つとして考えられるのが、「職務定義書(ジョブディスクリプション)」の曖昧さである。「メンバーシップ型雇用」という言葉を耳にする機会が昨今増えているが、金融業界はジョブローテンションが活発な為「職務定義書(ジョブディスクリプション)」が曖昧な内容になっている。その結果として「自分が将来何をしているか、想像できない。」という社員が続出してきた。

こういった現状を踏まえた上で大手金融会社では副業が認められるなど、自身の「やりたい事」が比較的自由に行えるような環境が整えられている。しかし、副業についても実際に行えているのは一部の社員に収まっているため、本当の意味で社員が自身のキャリアの幅を広げる策にはなっていない。

改善策としては、「職務定義書(ジョブディスクリプション)」を明確に示すことが必要であると考える。自身の業務やその業務に伴うスキルセットが明確になることにより、将来自分が進みたいキャリアについて考える機会が生まれるのである。その結果として、「今後のキャリアステップが見えない。」「自分のスキルセットが分からない。」「将来が不安。」といった社員を減らすことができ、優秀な人材の流出を抑えることが出来るのである。

2.評価制度

評価制度として金融機関でよく見られるものには、2つの目標が設定されていることが多い。目標数字を与えられ、その達成率で評価される「定量的な目標」。コンピテンシーを設定された上で、通年の行動を評価される「定性的な目標」。この2つである。一見すると結果と過程の双方を評価してくれる為、合理的な評価制度に見える。

しかし、結論としては双方ともに上司による評価がかなりの割合を占めている為、社員による不満が発生しやすい制度となってしまっている。「定量的な目標については、上司の評価は介在しないのでは?」と思う方も多いと思うが、目標が達成できなかった場合でも上司に過程をアピールできれば評価の底上げを図れるため、上司の評価も重要となるのである。

上記の評価制度により、実際の業務は二の次にした上で、いかに自身が仕事に励んでいるのか、素晴らしい業績をあげているのか、という内容をメールや社内の掲示板で発信している人の姿がよく見られる。その結果として、金融業界では「あの人は上を見て仕事をしているから。」という陰口をよく耳にすることがある。こういった現状がみられるため、特に若い世代の社員においては、発信が上手い諸先輩が評価され、自分が正当に評価されていないと感じ仕事への不満を抱える人が多く見られるのである。

改善策としては、一部の企業ではすでに行われているが、「360°評価」や「ピアボーナス」の導入などが考えられる。何故ならば、どうしても金融会社の特に営業の支店においては、社員の行動や貢献というものが見えにくいため、その部分を「見える化」することにより、社員のエンゲージメントというものは大きく改善されるためである。今後は新卒社員を大量に採用するだけでなく、ジョブ型の雇用で採用する社員も増えてくる為、今までと同じような評価制度では通用がしなくなってくる。今後の採用も踏まえた上で、評価制度を改革していくことが、企業としては重要な要素となってくるのである。

3.人材育成

金融機関の人材育成については、比較的先進的なものであると言える。 コロナ以前より基本的にはオンラインで研修を行っており、自己学習するツールも豊富に与えられている。その為、社員は自身で学びたいことがあれば、自由に学習することが出来るのである。内容も自身の業務に関わる講座以外に、全く違った部署の講座も受講ができる為、自己研鑽の場としては非常に恵まれていると考えられる。

ただ、やはりここにも問題はある。ツールは確かに揃っているが、具体的にどう学習すれば良いのかが分からない社員が多いのである。「Learning needs analysis」というHRの考えがあるが、自己学習する際には自身のスキルセットや不足しているスキルの分析が必要である。本来はマネージャー層が分析をメインで行い、部下のスキルを分析し伝えた上で、足りないスキルを教えるべきであるのだが、分析のノウハウをマネージャーが理解できていないことが多く、適切な学習が行われていないことが多い。結果として現場の先輩社員などに教育が任されてしまい、平等な教育がされておらず、不満を感じている社員は多い。

改善策としては、【1.採用】の部分で記した「職務定義書(ジョブディスクリプション)」を明確に示すことにより自身が身につけるべきスキルを明確にすることや、マネージャー層に「Learning needs analysis」という考えを学ばせることが考えられる。働き方が大きく変わってきている状況の中、社員一人一人の今後のキャリアステップの中で、「今の職場で何を身につけられ、どの様に自身の今後に役立つのか」ということを明確にすべきなのである。

4.まとめ

上記3つの点以外にも課題は存在するが、共通していることとしては、今後の金融業界の行く末を想像した上で、その将来像に適した施策を行なっていくことである。フィンテックや仮想通貨、プラットフォーム企業の脅威などについてマネージメント層はよく議論を行なっているが、話すだけでは全くもって意味がない。予想を立てた上で事業戦略を立て、優秀な人材を確保し、育成していくことが今後は重要になってくる。そして、その為にはHRMの考えを人事部だけでなく経営層にまで浸透させていくことが今後は重要になってくるだろう。

(M.N)

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