コロナ禍での働き方と2021年の展望 ~Voice!for HRM Vol.30 ~

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コミュニケーション学の第一人者である慶應義塾大学文学部井上逸兵教授と日本初英国式HR資格保持コンサルタントによる共同開発の「企業内コミュニケーション診断」がついにリリース!

2019年末に端を発するCovid-19の世界的な勃発は世界中に政治的、経済的なダメージを与えることとなりました。中華人民共和国、武漢を中心に新型コロナウィルスが流行した当初、私はイギリス北部の工業都市マンチェスターにてHRコンサルタントとして多くのグローバル企業の人事施策立案・改善の支援を行っておりました。勃発当初、英国国内では「中国ウィルス」と呼ばれ、街中で暴行を受けるアジア人を度々目にしました。私が勤務するオフィス内でも、世間話の延長上で同ウィルスに関する話題が上がっていたのを鮮明に覚えています。しかし、このわずか2か月後にオフィス閉鎖、3か月後には英国全土での都市封鎖が行われ、私たちの生活そして働き方がドラスティックに変貌することとなりました。この過程で莫大な赤字を出し、倒産に追い込まれる企業も続出しました。かの有名な英国旅行代理店トーマスクックや老舗百貨店Debenhamsの倒産はイギリス全土を震撼させました。私自身、担当するクライアント様の中でも倒産に追い込まれた企業は多数おり、その経済的打撃は様々な産業へと波及することとなりました。倒産を余儀なくされた企業、倒産を何とか乗り切った企業またV字復活を遂げた企業。

様々な業種・業態の中で生き残ってきた組織に共通していることが一つだけあります。それは「Putting People First for Organizational Success (組織の功には人財が第一)」です。この文言はスタンフォード大学経営大学院の組織行動学を専門とするJeffrey Pfefferの論文のタイトルにもなっています。この論文は1999年に出版以来、多くのHR Practitioner (実践家)やScholar (学者)の間でも度々重宝されてきました。その一方で、アンチテーゼ的立場を取るビジネスピープルや学者からは「Anecdote (寓話的)」などと揶揄され、エビデンスドリブンなアプローチの重要性が台頭してきました。

2000年代より人の感情などを度外視した「科学的・統計的手法」に関する論文、研究が盛んになり、社会学的視点での組織内コミュニケーション/対話の重要性が軽視されるようになりました。近年では、DX化の推進やAIの導入の中で無駄な時間・業務を最小化する動きがますます加速し、リモートワークの推進、定着と相まってこの流れはさらに拡大する見通しであります。 2008年に端を発するグローバル金融危機禍でも、「従業員の味方」・「戦略的なパートナー」としてのHRの役割は日常業務的、非戦略的と退けられ、コスト削減のためにアウトソーシング化が行われてきました。全産業におけるHRへの投資額は世界的に縮小の一途を辿ってきました。

しかし、経済状況の改善と共に、採用やエンゲイジメントそしてリテンション強化を行う企業の多くがHRひいてはPutting People Firstの重要性を再認識し、大規模なES (従業員満足度調査)や EX (従業員体験調査)に乗り出すこととなりました。このような調査を基に、改めて自社の組織風土を確認し、経営層、中間管理層そして各従業員との目線のズレを補正したり、離職率やエンゲイジメント低下につながり得る不平不満を解消する試みがなされてきました。

今回のパンデミックも2008年の金融危機と同様に多くの企業が厳しい局面を迎えているでしょう。HRの予算カットやHRの中枢機能のアウトソーシングに走る企業も少なくありません。HRの概念は1980年に誕生し、今回のパンデミックで2回目の危機的状況を迎えています。厳しい環境の中で成功を収める企業は、ほぼ例外なく2008年の反省を活かしPutting People Firstを実践しています。今回の危機では、リモートワークの普及など働き方そのものが大きく変革したこともあり、遠隔勤務体制の中でどのように「コミュニケーション」を取れるかが key to success (成功への鍵)となるでしょう。Zoomミーティングやオンラインでの営業など、バーチャルでの働き方に難航する従業員も多いはずです。日本では組織の高齢化や世代間格差が広がり、部署間そして部署内での連携が上手くいかないと感じている経営者様も多いのではないでしょうか。

慶應義塾大学文学部コミュニケーション学の第一人者である井上逸平教授も「リモートワークが進む昨今では、社内で誰と・どのくらい・どのようなコミュニケーションを取っているかを定量的、定性的に分析することは業務円滑化にとってクリティカルである」と指摘しています。コミュニケーション学の巨匠である井上教授とHR ProfessionalであるSSKコミュニケイションズHR推進部のコラボレーションによって「今、企業が最も必要とする」調査を開発いたしました。社内のコミュニケーションの特性を知ることで、必要な施策・プラットフォームの選定が可能になります。是非、ご興味のある方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

(D.S)

コミュニケーション診断(カイシャの健康診断)は2024/1末をもって終了いたしました。ありがとうございました!