HRM講義「今更聞けないTalent Management (後編)」 ~Voice!for HRM Vol.41 ~

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前回は Talent Management の定義やTalent Acquisitionとの違い、そして Talent Management の変遷についての解説を行った。前編の記事はこちら。今回は、Talent Managementの重要性そしてTalent Management Systemについて説明を行う。

なぜTalent Managementは重要か?

「ヒト」は会社の心臓です。適切なタレントがいなければ企業は悪しき文化や低い顧客満足度、そして何よりもイノベーションが生まれにくい環境になるリスクに晒されることになります。今日、雇用者はかつてないほど複雑なタレントマネジメントに直面しており、タレントを上手くマネジメントしている企業はそうでない企業よりもはるかに高い競争優位を有していると言えます。

伝統的に、従業員に関する支出はビジネスコストと見なされてきました。しかし、急速な変化のスピードに適応するためには企業は機敏にイノベーションと成長のために従業員のスキルを最大化させなければなりません。企業は継続的に従業員へ投資しなければならないということです。言い換えれば、エンゲイジメントの高い従業員は生産的であり、その結果組織の収益に影響を与えるためタレントマネジメントが重要であるということです。

“ The Employee Experience Advantage (従業員体験の利点)” の著者であるJacob Morganの研究によれば、企業風土やテクノロジーそして物理的空間 (従業員が働く場所)に投資をしている企業はそうでない企業に比べ4倍の利益があるという。

今日我々は、Covid-19の影響下の下、厳しい状況に立たされています。アジア銀行によればアジア地域全体は、2008年リーマンショック以上の財政危機を迎えています。これを受けHRMに対する企業の投資額はシュリンクし、いわば「ヒト」への投資が蔑ろにされていると言っても過言ではありません。今こそ優秀なタレントを獲得し、育成させることで競争優位を確保するチャンスといえるでしょう。

Talent Management Systemとは?

従業員エンゲイジメントは、高い生産性、イノベーション、顧客満足度そして利益性を語る上で最も大きな指標となります。しかし、戦略的に従業員エンゲイジメントを駆り立てるために、企業は従業員やビジネスそしてタレントに関連した洞察を身に着ける必要があります。現代のTalent Management Systemの登場です。

歴史的にはTalent Systemは業務コンピテンシーに関するタレントプラクティスの統合にフォーカスをしていました。しかしながら、現代のTalent Management Systemは従業員体験のサポート及び促進を行います。そしてこの体験をビジネス戦略と結びつける働きを担っています。

従業員体験とは採用に対する候補者の体験、専門的な育成からwellbeing (従業員のプログラム)への参加までの組織におけるあらゆるインテラクションを指します。従業員の体験のサポートし、促進することで得られる洞察を用いて、企業はスキルギャップの特定からポテンシャルの高いタレントのリテンション (保持)に至る組織を跨いだビジネス戦略の研ぎ澄ましが可能になるのです。

例えば、どんな企業であれ戦略的に優秀なタレントを保持し、パフォーマンスの高いチームを構築したいと考えるでしょう。しかし、どのように始めるべきか。またどのように予定通りに進んでいるかを確認するのか。タレントマネジメントシステムとは、従業員が最高のパフォーマンスを行えるような環境づくりに必要な洞察とこのような環境が上手くいっているかを測定する分析を組織に提供するものなのです。

また、従業員サーベイによって企業は従業員の退職防止とパフォーマンスの指標である職場のカルチャー(風土)と体験に対する「想い」を測定することができるようになる。このサーベイを定期的に行い、今までの一連の施策の振り返り (採用・選考戦略、新入研修、オンボーディング、トレーニングプログラム、評価システム、報酬水準、リテンション、退職)をし、次の施策に向けた論拠を作成することが大切です。

HR施策は企業ごとに「相性」があります。一般的に上手くいくと考えられているいわばBest Practicesも全ての組織に普遍的に機能するとは限りません。そのため、論拠/エビデンスを持って各施策を打ち出し、その結果を振り返ることで、なぜ上手くいかなかったかを考える材料となるのです。

(D.S)

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