米国におけるThe Great Resignation「 大量退職 時代」–どうなる日本の労働市場– ~Voice! for HRM Vol.82~

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近年、アメリカを中心に度々取り沙汰されている ‘The Great Resignation’というフレーズを聞いたことがありますでしょうか。「Resignation」は日本語訳で「辞職」や「(自主)退職」を指し、The Great Resignationは直訳すると「 大量退職 」といったような意味合いになります。このフレーズはBloomberg Businessweekの記事でテキサス大学A&M大学のAnthony Klotz氏が提唱したコンセプトであると言われています。

The Great 〇〇と聞くと大半の方が、1930年代に発生した’The Great Depression’「大恐慌」を想起する方が多いのではないでしょうか。また、2008年に端を発した金融危機はThe Great Recession と呼ばれる他、コロナ禍ではThe Great Lockdownとも称されることもあります。

アメリカにおける一連のムーブメントは多くの場合、世界中に波及し、遠からず日本においてもその影響を受けると言われています。アメリカにおける 大量退職 の原因として挙げられるのが

・人財不足による労働者の売り手市場化・求人数の劇的な増加

・リモートワークの普及による「職場の魅力度」のばらつき

・SNSにおける発信・ムーブメントの波及力の増大

・Wellbeing経営・メンタルヘルスへの関心の高まり

です。

とりわけITやテクノロジー領域では、高度スキル人財を巡って、GAFAMを始めとするメガ企業が超高額な賃金でオファーしたり、働き方の自由さを売りにしたりなど職場の魅力度をアピールした採用活動を行ってきました。その結果、優秀な人財が少しでもよい条件の会社に移るいわゆる「ジョブホッパー化」する現象が起きているのです。

日本においても、労働人口の急激な高齢化や人財不足の深刻化から、採用市場の売り手化が進行してきました。また、リモートワークや勤務時間のフレキシブル化など労働者に働きやすい環境を提供することで、Employer Branding (職場の魅力度)を高め、優秀人材の獲得を図っており、日本の労働市場もアメリカを中心とした欧米諸国と同じ経路をたどっていることがわかります。

この結果、起こり得る現象として考えられるのが、魅力ある職場とそうでない職場の二極化です。前者は優秀な人財の獲得そしてリテンションを行える一方で、後者は採用難・優秀人材流出に苦戦し、このギャップは今後ますます拡大することが予想されます。

GAFAMにように、金銭的な報酬を売りに優秀人材の獲得を行える企業はごく僅かです。また、全ての企業がリモートワークやフレキシブル勤務を導入できるわけでもありません。

手っ取り早いのが調査をして、様々な制度や施策を組み合わせながら魅力的な職場をつくることです。採用の文脈で、候補者にとって魅力的な職場を演出するためには、結局のところ既存の従業員が働きやすく、イキイキとしていなければ元も子もありません。

まず初めに、既存の従業員がどのような「働き方」「制度」に満足感を示し、心理的な安全性やロイヤリティを感じるかを調査し、結果に基づいて、効果の出そうな施策や制度を組み合わせながら貴社の「ベストフィット」を模索していくことが重要です。

Employment Cycle (従業員ライフサイクル)に沿って、貴社の人事制度や施策が従業員のモチベベーションの源泉となっているかを調査し、改善施策を打ち出していきましょう。


(D.S)