採用会社は必要か?-Peer to Peer採用はニューノーマルとなるのか- ~Voice!for HRM Vol.33 ~

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ジョブマークによると、日本全国の転職エージェント(人材紹介会社)の数は17,000にも上るという。

大半の方々が一度は「転職エージェントから営業を受けた」「転職エージェントからスカウトを受けた」ことがあるのではないだろうか。では、なぜこれほどまで転職エージェントの数が多いのであろうか。その理由は単純明快で儲かるからである。エグゼクティブクラスの転職を仲介するとそのマージンは数百万にも上るといわれ、いまや「採用会社ドリーム」と呼べるほど大きなマーケットとなっている。

確かに、離職率や人財不足に頭を悩ます経営者の方々は多く、その主たる理由としては求職者への「リーチ」である。転職エージェントを活用すれば、数百万人の求職者へのリーチが可能となり、求人看板を立てるよりも遥かにスピーディーにかつ大母集団のプールを築くことができる。そのため、迅速に働き手を求める雇用者にとっては便利なサービスであることは言うまでもない。

しかし、採用会社がこれほどまで多く存在し、巨額の利益を上げている理由は日々人材が流動し、その裏面でエージェントが求人・求職サポートを行っているからである。求人を行う経営者にとって、「採用」とは雇用サイクルの始まりであり、転職エージェントにとっての採用とはゴールである。募集するポジションの業務それ自体、そしてその業務遂行に必要な「スキルセット」そして「マインドセット」を明確にした上でのエージェント活用を行わなければ、不適切な候補者選択につながる。ミスマッチした人財は再び求人マーケットへと流出するため、転職エージェントにとってはある意味好都合かもしれない。しかし、雇用主にとってはエージェントへの報酬だけでなく、給与・研修コストなど多額の損失を負うことになる。

REC UK の2019年の調査では転職エージェントを通してミドルマネージャークラス(年収約500万)の採用を行い、誤った候補者を選択すると約1800万円の損失を被るという (REC UK, 2019: https://www.rec.uk.com/research/perfect-match)。

近年ではパナソニック社などの大手企業もLinkedin などのプラットフォームを活用し、直接候補者にアプローチするいわゆるPeer to Peer型のキャリア採用に着手している。同社は北米マーケットにおけるキャリア採用の80%をLinkedin上で行い、優秀なグローバル人財の獲得を行ってきた。企業の情報発信と候補者のスキルセット、コネクションなどの社会資本的要素の評価を同時に行えるため、採用活動が効率的にかつ効果的に行えるようになった。(出典:2013年12月26日 PRTIMES

パナソニック社などのメガ企業だけでなく、規模の小さな企業も安価に情報発信や欲しい人財へのアプローチを行えるため、これからの採用のあり方に即したメソッドといえるだろう。いずれにせよ、求人の掲載や委託を行う前にオファーするポジション業務内容(必要マンパワー率を含む)と必要スキル、コンピテンシー (行動特性)を言語化しなければならないであろう。

(D.S)