「患者体験」とは?-イギリス国民保健サービスから学ぶ病院経営術- ~Voice!for HRM Vol.47 ~

近年、日本の労働市場では「体験」という言葉が様々なコンテキストで使用されてきました。「従業員体験 (EX)」や「顧客体験 (CX)」そして「ユーザー体験 (UX」など一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。従業員や顧客にフィードバックを求め、改善を行うという取り組みは50年以上続いてきましたが、ここ最近では単なる形式的な満足度ではなく、各当事者が仕事やサービスを通じてどのように感じたかを立体的に可視化することの重要性が指摘されています。

例えば、一般的な労働組織内では、いかなる従業員でも採用から退職という雇用サイクルを経ることになります。その中で、労働者目線による主観的な体験を集合的に可視化することでより今までよりも良い人事制度を創り上げることができ、結果的に顧客への態度やサービスの質そして生産性を向上させることができるというものです。

ここ数年では病院・医療現場においても、「体験」調査を盛り込もうという動きが見られます。その中でも、イギリスの国営医療サービス事業者であるNHS (国民保険サービス)は積極的にこの体験志向を医療現場に活用してきました。数十億単位の投資を行い、HRM・人事領域のプロフェッショナルを囲い込み、Patient Experience (患者体験)なるものを体系化しました。以下がNHSのウェブサイトからの抜粋になります。

https://www.england.nhs.uk/wp-content/uploads/2013/11/pat-expe.pdf

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いかなる医療現場であれ患者を全ての中心に置き、思いやりかつ尊厳に満ちた医療サービスや処置を迅速に提供するカスタマーサービス文化これこそが「患者革命」である。

「体験」とは安全と医療的効率性に加え、同様に協調されるべき重要なクオリティーの一つだ。

NHSの研究によれば以下のようなことが証明されている

・体験と医療効果の相関性:良い医療体験を受けた患者は統計的により良い医療効果を享受できる

・患者が処置に対してそして処置の選択肢を事前に通告され得る場合、「体験」は改善する

・スタッフと患者の関係性: スタッフがしっかりとケアされた状態にあれば患者の体験に良い影響を与え、逆に患者が劣悪な体験をすればスタッフの体験も悪化させる

・体験と処置費用の相関性: 乏しい経験は一般的により高い費用につながる。なぜなら患者の医療効果は悪化し、長期間入院または処置を受けなければならないからだ

・患者の体験が及ぼす組織的評判: 患者が劣悪な体験を受けると組織の評判を傷つけることになる

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実際に弊社のコンサルタントは、NHSが掲げるFramework に基づいて病院・各医療従事者様に「患者体験」改善施策を行ってきました。PX調査やNHSのフレームワークを活用した施策について詳しくはこちらからお問合せください。

(D.S)