在宅禁止なら3割が転職を検討!?トータルリワードとテレワーク ~30人の会社のテレワーク Vol.92 ~

子供が夏休みなので、実家に帰省し、九州から仕事をしていました。両親が子供を遊びに連れて行ってくれている間に実家で静かに仕事をしたり、ホテルの1階にあるワーキングスペースに行ったり、大きな支障はなく過ごすことができました。便利になりましたね!

今回はテレワークと報酬について考えてみたいと思います。

目次

テレワークの実態

2023年5月8日から新型コロナウイルス感染症が2類相当から5類感染症に移行されました。この政策により、テレワーク実施率はどのように変わったのでしょうか?いくつかの調査を見てみましょう。

日本生産性本部の調査

公益財団法人日本生産性本部が2023年8月7日に発表したレポートによると、2023年7月のテレワーク実施率は15.5%で過去最低となりました。2023年1月調査との比較を従業員規模別に見ると、1001名以上の企業では34%から22.7%へと減少、100名以下では12.9%から12.8%に微減、101~1000名の企業では13.2%から15.5%へと微増しました。(日本生産性本部, 2023)

テレワーク実施率が過去最低となった背景として、コロナ禍に対する一時的な対応としてテレワークを取り入れていた企業が、「5類」への移行により、オフィス勤務へ回帰する動きをより活性化させたことが要因として考えられます。一方で、テレワークを働き方の1つのオプションをして継続活用している企業の従業員には、テレワークによる仕事効率の向上や満足度の高さ、継続を望む超えが多く見受けられました。(日本生産性本部, 2023)

東京都の調査

2023年7月11日に東京都が発表した調査結果によると、2023年6月の都内企業のテレワーク実施率は、2023年5月と同率の44%でした。従業員規模別に見ると、300人以上の企業では61.7%、100~299人の企業では46.6%、30~99人の企業では39.2%という結果でした。(東京都, 2023)

テレワークの実施回数については、週3日以上テレワークをしていると答えた人の割合は、2023年6月は45.2%、2023年5月は42.4%でした。(東京都, 2023)

日本では4月最終週に東京の都心部の出社率が新型コロナ流行前の7割に戻るなど、オフィス回帰が進んでいます。これに対してアメリカでは主要都市圏のオフィス出社率は50%程度です。在宅勤務やハイブリッド勤務を認める企業がある一方で、一定数以上の出社を義務付ける企業も見られます。 (日本経済新聞, 2023)

在宅禁止なら転職を検討!?

日本生産性本部の2023年7月の調査では、回答者の約86%が、今後もテレワークを行いたいと答えました。(日本生産性本部, 2023)

株式会社アスマークの調査によると、理想の在宅勤務の頻度は週2~3日という意見が4割を超え最も多く、出社と在宅を組み合わせたハイブリッド型を望む人が多数派となりました。また、「もしも在宅勤務が禁止になったらどう思う?」という設問に対して、「いやだが我慢する」が過半数を占める一方で、「転職を考えると思う」「転職する」が合わせて3割を超える結果となりました。特に20~30代女性の場合、転職を意識する人が他の属性よりも多いことが分かりました。(ASMARQ, 2023)

イギリスの調査でも従業員が柔軟な働き方を望んでいることが明らかになっています。オフィス勤務を義務付ける企業が増えている一方で、従業員のほぼ半数(47%)がハイブリッド方式の勤務を好んでいます。また、約4分の3の回答者が、会社の柔軟な勤務方針が撤回された場合、積極的に新しい仕事を探すか、検討するつもりであると回答しました。さらに、求職者の40%以上が希望する働き方を提供しない職種には応募しないと答えており、柔軟性に欠ける企業は優秀な人材の採用に苦戦することが判明しています。(Mayne, 2023)

トータルリワードと柔軟な働き方

トータルリワード(総合的な報酬:Total Reward)には、給与や福利厚生に加えて、柔軟な勤務の機会や公正な報酬など、仕事のあらゆる側面が含まれます。トータルリワードアプローチでは、職務経験のあらゆる側面が評価され、非金銭的な報酬も重視されます。非金銭的な報酬の例として、
・専門的および個人的な能力開発の機会
・意義のある仕事
・自由と自主性
・昇進のチャンス
・公平性・透明性
・柔軟な作業オプション
・ラインマネージャーのサポート
などが挙げられます。(CIPD, 2023b)

トータルリワードの概念は、報酬の様々な側面、つまり金銭的報酬および仕事自体からの本質的な報酬である非金銭的報酬が相互に関連付けられ、統合されたまとまりのある全体として扱われる必要があることを示しています。

非金銭的報酬は、承認・達成・個人の成長・許容可能な労働条件・個人の幸福といった人々のニーズに焦点を当てています。やりがいのある仕事の設計、人々にスキルやキャリアの開発の余地を与えること、質の高い職業生活を提供する職場環境の提供、仕事と私生活の適切な関係(ワークライフバランス)の提供、および低所得従業員のニーズへの配慮が求められます。非金銭的報酬には、賞賛や評価などの外発的なもの、または仕事のやりがい・興味・仕事に価値があるという感情に関連した内発的なものがあります。

トータルリワードアプローチでは、金銭的な報酬だけでなく、労働環境から生まれるやりがいのある経験や、スキルやキャリアを開発する機会を人々に提供することの重要性も認識しています。これは、有能な人材がその会社で働くべき理由に貢献し、従業員エクスペリエンスを向上させるための重要なアプローチです。(Armstrong, 2023)

柔軟な働き方を提供することは、トータルリワードの文脈において、報酬の一部です。昨今の柔軟な働き方へのニーズの高まりを考慮すると、柔軟な働き方を取り入れることは、企業の競争力を高めると考えることができます。

柔軟な働き方とは、従業員がどれだけの時間、どこで、いつ働くかについてある程度の柔軟性を与える勤務形態のことを指します。フレックスタイム制・ジョブシェアリング・ハイブリッドワーク・在宅勤務などが含まれます。(CIPD, 2023a)「リモートワークができないから柔軟な働き方ができない!」ということはありません。選択的週休3日制やサテライトオフィスの利用なども柔軟な働き方の1つと言えるでしょう。

柔軟な働き方ができている人は、そうでない人に比べて、仕事の満足度やコミットメントのレベルが高いことが分かっています。また、欠勤率の削減やメンタルヘルスやストレスのサポートなど、従業員の心身の健康にもメリットをもたらします。(CIPD, 2023a)

適切に設計された報酬体系は、企業の評判を高め、候補者を惹きつけ、既存の従業員を維持し、エンゲージメントを高めることができます。柔軟な働き方を提供することを報酬の一部ととらえ、貴社と貴社の従業員に合った働き方を今一度考えてみてはいかがでしょうか?

今回はCIPDの見解を一部ご紹介しながら、柔軟な働き方について考えてみました。皆様、よい夏休みを!


【リファレンス】

Armstrong (2023). ARMSTRONG’S HANDBOOK OF HUMAN RESOURCE MANAGEMENT PRACTICE
44 The basis of reward management

ASMARQ (2023). コロナ5類移行に伴うオフィス回帰『在宅勤務者の本音』~「在宅禁止なら転職検討」が3割超
https://humap.asmarq.co.jp/whitepaper/remote_honne/
2023/8/9 閲覧
※詳細資料ダウンロードには個人情報の入力が必要です

CIPD (2023a). Flexible working practices
https://www.cipd.org/en/knowledge/factsheets/flexible-working-factsheet/
2023/8/10 閲覧

CIPD (2023b). Strategic reward and total reward
https://www.cipd.org/en/knowledge/factsheets/strategic-total-factsheet/
2023/8/10 閲覧

Mahalia Mayne (2023). Majority of employees ready to walk if companies do not embrace hybrid working, report reveals
https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1826848/majority-employees-ready-walk-companies-not-embrace-hybrid-working-report-reveals
2023/8/10 閲覧

東京都(2023). テレワーク実施率調査結果6月
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/07/11/11.html
2023/8/10 閲覧

日本経済新聞(2023). 米国のオフィス回帰、5割どまり コロナ禍で在宅浸透
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN03CBU0T00C23A7000000/
2023/8/10 閲覧

日本生産性本部(2023). 第13回働く人の意識調査
https://www.jpc-net.jp/research/detail/006527.html
2023/8/10 閲覧