quiet quittingの意味とは?HRは何をすべきか? ~30人の会社のテレワーク Vol.82~

“quiet quitting”、”quiet quitter”というワードがバズっているようです。直訳すると、”静かに辞める”、”静かな退職者”。
雇用を維持するための最低限の仕事のみを行う従業員のことを指し、HR関係者の間で話題になっています。

テレワークが普及し、働き方やワークライフバランスについて考える機会が多くなりました。
今回は quiet quitting とHRについて、イギリスのPeople Managementというサイトの記事をご紹介いたします。

目次

従業員が意識的に仕事から離れているという概念がソーシャルメディアで広まりつつある中、people Managementはこの最新のワークプレイストレンドについて、企業に何ができるかを専門家に尋ねた。

従業員のburnout(燃え尽き症候群)と広く関連しているquiet quitting(従業員が仕事から解放され、最低限の義務を果たす)という考えが、最近注目を集めている。この用語は先週インターネットを介してまたたく間に広がったTikTokビデオに続いて話題となり、HR専門家の間で、ホットな話題になっている。従業員の不満の兆候とみなされるか、単に仕事が人生の大半を占めるべきではないという概念とみなされるかに関わらず、quiet quittingを認識することは、これまで以上に重要になっている。新たに出現した慣行が勢いを増し続ける中、People Managementは業界の専門家に相談し、従業員のquite quittingを防ぐ方法と、quite quittingを行うことを選択した従業員を雇用主がどのようにサポートできるのかについて検討する。

なぜ従業員は仕事を”静かに辞める”のか?

「ソーシャルメディアに拍車がかかった今、quite quittingの話は爆発的に広まっているかもしれないが、現実には、この慣行は何も新しいことではない」と、Glassdoor EMEAのキャリアトレンドエキスパートであるJill Cotton氏は主張する。

何年もの間、多くの労働者が新しい仕事を探すために静かに辞め、キャリア成長の欠如・低賃金・または手に負えないほどの仕事量のために仕事から離れてきた。最近の出来事が従業員が静かに辞める理由を増やしたのではないかと、彼女は推論する。「これまでと現在の違いは、パンデミックにより仕事の世界が一変したことにより、ますます多くの人々が自分のキャリアとワークライフバランスの選択に疑問を抱くようになったことである」とCotton氏は言う。

quiet quittingは生産性の低下、会議への不参加、チームプロジェクトへの貢献の失敗、遅刻や早退など、様々な形をとる可能性がある。CronerのサービスディレクターであるRachael Knappier氏は、従業員がこの道をたどる理由も様々だと述べる。「従業員が職場で過小評価されていると感じた時に発生する可能性がある。彼らは、ワークライフバランスが問題になり、burnout(燃え尽き症候群)を経験していると感じているかもしれない。仕事にかける労力を減らすことで、従業員は自分の仕事の優先順位を下げ、バランスを調整しているように感じるかもしれない。」と彼女は言う。

このように、ワークディスコネクトのタイプにより、個人は賃金を維持しながら、より良い仕事を探したり、「退職届を提出して新しい仕事を見つけるストレスを回避したり」することができる。

quiet quittingの防止

Knappierは、従業員経験(EX:Employee Experience)を改善して、このようなタイプの離職を防ぐことの重要性を強調し、雇用主はすべてのスタッフと、職場で価値があり、感謝されていると感じられるようにするための最善の方法について話し合うことを提案している。彼女は次のように述べている。「一般的な励ましの言葉が効果的な人もいるかもしれない。それが退屈でキャリアの次のステップに進み、さらに自分自身に挑戦したいと考えている人もいるかもしれない。」雇用主が従業員と協力して、効果的な計画を立てるように努めれば、「すべての関係者が利益を得ることができる」と、彼女は付け加えている。

これに呼応して、臨床心理学者であり、Working Mindsetの共同創設者兼ディレクターでもあるRebecca Holt氏は、従業員がこの状態にならないようにするためのカギは、従業員が仕事に従事し、仕事が人々に目的と意味をもたらすことを保証することだと述べている。「従業員は、全体の一部であると感じ、自律性とコントロールを持ち、心理的に安全であると感じる必要がある。」と彼女は言う。このためHolt氏は雇用主のワークロードが現実的であること、適切な境界線があること、メンタルヘルスのケアが優先されることを確認することの重要性を強調している。

さらに、現在の厳しい採用シーンの中で、新しい従業員を採用する前に、組織が現在の職場文化を定期的かつ正直にレビューする慣行を確立し、新しい人材を採用する前に基盤を強化することが重要であるとCotton氏は述べている。

企業の文化と価値観が自分自身のものと一致し、組織が強力なリーダーシップとキャリアの機会を提供するときに従業員が最も満足していることを示したGlassdoorの最近の調査を引用して、企業がこれらの分野のいずれかで苦労している場合、従業員が自身の役割から離れかけていることに雇用主は気づくかもしれない、とCotton氏は述べている。「企業が従業員経験(EX:Employee Experience)を事業計画の中心に据えない限り、quiet quittingはすぐに従業員の退職につながるだろう」と彼女は警告する。

quiet quittingの管理

専門家は、quiet quittingの状態になっている人を見つけるのは比較的簡単であることに同意している。なぜなら、以前と同じように努力しなくなったり、労働から離れたり、基準が低下したりするためである。

ほとんどの雇用主はそのようなケースを行動問題として扱いたいと考えるかもしれないが、Knappier氏は、まず従業員と会って、彼らがどのように感じているのか、なぜ彼らがやる気を失っているのか、何ができるのかを完全に理解することが役に立つかもしれないと示唆している。

「そうすることで、前向きな仕事上の関係を築き、個人が離職したり正式な懲戒処分を受けることなく、問題を解決することができる。非公式な議論は、おそらく第一に最善のアプローチである。」と彼女は言う。

雇用主は、労働者が仕事から離れていくことに不安を感じるかもしれないが、同時に、HireVueのシニア心理コンサルタントであるTom Cornell氏は、従業員のモチベーションとエンゲージメントが一定ではないことを覚えておくことが重要であると述べる。「どちらも、現在英国で見られている生活費の危機など、多くの要因により自然に変動する」と彼は言う。

このことを念頭において、何が個人をquiet quittingに向かわせているのかを最初に理解せずに、エンゲージメントの谷間を罰しないように注意するよう、彼はビジネスリーダーや人材専門家にアドバイスしている。「[リーダー]がこれを行うと、最終的には個人を辞めさせ、才能の喪失とビジネスの生産性の低下につながる」とCornell氏は警告する。

‘Quiet quitting’: how should HR manage it?
by Yoana Cholteeva 8 August 2022
https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1795213/quiet-quitting-hr-manage-it

quiet quittingでもよい!?

quite(やめる)というワードから、仕事をしていないという印象を持ってしまいますが、quiet quittingは仕事をしないという意味ではありません。成果を上げないという意味でもありません。「必要以上に仕事をすることを辞める」「仕事が人生の全てだとするハッスルカルチャーからの脱却」がquiet quittingの意味するところだと思います。

定時内に期待されている役割を全うし、期待されている成果を出す」それって良いことではないでしょうか・・?

ここで考えなければならないことは、
・各人に期待する役割は何か?
・各人に求める成果は何か?
・期待する役割や成果が従業員とマネージャーの間で共有されているか?
・従業員が役割を全うし、成果を出すために、適切なフォローができているか?

ということです。

期待する役割や成果が明確ではないままquiet quittingに向かってしまうと、どんどんcoasting(惰行)につながってしまいますね・・・一方で、役割や成果を明確に理解し、契約時間内で期待されている成果を出すquiet quitterは、良い意味でのquiet quittingを行っている方と言えるのではないでしょうか。

「quiet quitting」から学ぶコミュニケーションの重要性

まずは、各従業員に期待する役割と成果を明確にすることから始めましょう。
期待されている役割と成果を明確にするために、それぞれの立場でできることを考えてみました。

立場できること
経営者・会社のビジョンや戦略を従業員に共有する。
・トップマネジメントとのコミュニケーションの機会を設ける
人事・HR・ジョブ型雇用や職務定義書の作成を通して、各人に求める役割を明確にする仕組みを作る
・成果に応じた報酬が与えられる評価制度・報酬制度を設計・運用する
グループ長など部下を持つ人・定期的な1on1ミーティングを実施し、メンバーの進捗確認・フォロー・動機付けを行う

上記は全て「コミュニケーション」です!

今回ご紹介した記事の中で、「エンゲージメントとモチベーションは一定ではない」という表現が非常に腑に落ちました。常にモチベーション高く働けるのが一番良いですが、働いている中では、立ち止まって考えたりする期間や、モチベーションの維持が難しい期間もあると思います。従業員のそのような兆候を察知し、HR・マネージャー・経営者からコミュニケーションを取っていける企業風土を作れたら最高ですね!

では、仕事における「コミュニケーション」とは、何を意味するのでしょうか?「コミュニケーション」というワードから「仲良くなる」「社交性」「信頼」などを連想する方が多いのではないかと思います。もちろん、それらも大切です。

「コミュニケーション」を専門に研究されている、慶應義塾大学の井上逸兵教授は、弊社コラム:Voice!for HRM Vol.34 ~慶應義塾大学井上教授が語るコロナ禍での「はたらく×コミュニケーション」とは~の中で、次のように述べています。

仕事上のコンテキストにおいて、主たる目的は業務の遂行であり、この目的を戦略的かつ円滑に果たすためにコミュニケーションが求められます。つまり仕事上のコミュニケーションとはあくまでも業務遂行のための意思、情報伝達手段に他ならないのです。

Voice!for HRM Vol.34 ~慶應義塾大学井上教授が語るコロナ禍での「はたらく×コミュニケーション」とは~
https://www.ssk-com.co.jp/hrm/voice-for-hrm/3440/communication-of-working/

経営者が会社の方向性を示すために会社のビジョンや方針を従業員に共有することは経営者と従業員のコミュニケーションにあたります。人事制度はHR・人事と従業員のコミュニケーションの1つの手段です。経営者と従業員とのコミュニケーション、人事・HRと従業員とのコミュニケーション、上司と部下のコミュニケーション、同僚とのコミュニケーション、先輩/後輩とのコミュニケーション、お取引先とのコミュニケーション・・職場には、コミュニケーションがあふれています。

貴社のコミュニケーションはどのような特徴を持っているでしょうか?弊社では、「職場における全ての課題の根源はコミュニケーションにある」と考えております。慶應義塾大学の井上逸兵教授と共同で、コミュニケーションの観点から、企業風土を診断する調査~カイシャの健康診断~を開発しました。調査を通して、コミュニケーション課題を特定するとともに、過去の施策の振り返りを行い、次の施策のご提案・実行までサポートいたします。

社内のコミュニケーションを改善することにより、良い意味でのquiet quitterを増やしていきませんか?ご興味がある方はお問い合わせください。